3月8日の国際女性デーに合わせ、 “社会全体で女性と向き合い、知り、学ぶ1週間”と題し、3月2日(木)~8日(水)の期間に「W week」を開催しました。3月4日(土)・6日(月)・7日(火)には、様々な分野で活躍されているエキスパートをお招きした、オンラインセミナーを無料配信。多角的な視点から女性と社会を見つめるきっかけとなりました。
今回は、STEM(理系)分野で大学進学を目指す中学生/高校生女子への奨学助成金支援を行う山田進太郎D&I財団の特別協力のもと開催された、「〜先輩に学ぶ未来の描き方〜私が守る私の“からだ” 」をダイジェスト版でお届けします。
ゲストには、気象予報士・防災士の千種ゆり子さんと、婦人科医の岡田有香先生をお迎え。お二人の実体験を踏まえた、STEM分野でのキャリア形成のお話しからは、学び続ける姿勢と、別の道にも果敢に挑戦する勇気と努力がひしひしと伝わってきます。
地球温暖化を防止するには、私が「何かしなきゃいけない」
千種ゆり子さんは、気象キャスターとしてテレビ朝日やTBSのニュース番組に出演した経歴があり、現在は日本一脱炭素に詳しい女性キャスターとして活動しています。一方で、大学院で地球温暖化とネット世論について研究を続ける学生としての一面も。
環境問題に関心を持ったきっかけは、小学生の頃まで遡ります。
「私が小学校4年生の時に、京都議定書が採択されました。“地球温暖化が進むとツバルという国が沈み、そこに住む人たちにとっての故郷がなくなってしまうかもしれない”ことを知り、衝撃を受けて。『何かしなきゃいけない』という思いを、そこからずっと持ち続けています」
地球温暖化問題の解決のため、高校生になる頃には環境省に入ることを将来の目標に掲げていたとか。
「でも、大学で数学ⅡBの単位を落としてしまって、国家公務員の受験を諦めてしまいました。頼られるのは嬉しいものですし、もっと気軽に、友達や先輩に『教えて』と頼めばよかったなと少し後悔をしています」
大学の学部選択への後悔と、自分を見つめることの大切さ
ご自身の決断に誇りと自信を持ちつつも、大学の学部選択には後悔があると振り返ってくださいました。
「親類に法律家が多いことを父から何度も聞いていて。親に『これをやれ』と言われたことはなかったのですが、周りの期待を感じ取って行動するタイプだったこともあり、法学部に進みました。親や先生などの限られた大人から得た情報しかなかったので、自然と法学部を選択しましたが、もっと色々な職業の人の話を聞いてみたり、自分が何をしたいのか、何が好きなのか見つめ直してみればよかったなと思います」
東日本大震災をきっかけに変化した“キャリア感”
大学卒業後は一般企業に就職されましたが、東日本大震災をきっかけにキャリア感が大きく変化。「会社に頼らずに、しっかりと自分の力をつけるために専門的な資格を取りたい」という思いが、気象予報士資格の取得へと突き動かします。
「地球温暖化の防止について自分の言葉で答えられるようになりたかったので、まずは毎日の気温の変化が起こる理由を知るために気象予報士の資格を取りました」
就職先の選択に悩む学生に向けては、「私の場合、自分の貢献度や結果が見えやすい方が楽しいという気持ちに気付いたのは就職後でした」とご自身の経験を踏まえながら、「大きい会社ほど自分の貢献がなかなか社会に出ていかないというのも事実かなと思います。自分がみんなを引っ張っていきたいタイプなのか、下で支えるような役割が好きなのかを考えてみるのも良いかもしれないですね」とアドバイス。
早発閉経の診断と、カラダを知ることから始める生き方について
2022年の10月には、26歳の時に早発閉経と診断されたことを公表されました。
「大学時代に子供が好きだなと実感して、小学校のティーチングアシスタントのボランティアをやったり、小学校の先生を目指そうとしたこともありました。結婚して子供を産むことが自分の当然の目標になっていましたが、26歳の時に早発閉経と診断されて。そこから苦しみながらも、生き方を考え直して『子供が欲しくて結婚するんじゃないよ』と言ってくれる旦那さんと結婚をしました」
やりたいことがなくても焦らないで! いつからでも軌道修正できます
現在、大学院に通われている千種さんは“いつからでも学び直せる”ことを強調しながら、「私は旦那さんに後押しされて大学院を受験したので、周りの人に相談してみることや、誰かに助けてって言える関係を築いていくことも大事」だと話します。
そして、「データが中心の時代ですし、世論調査や統計、お金を扱う文系の仕事もある中で、理系の知識は強みになります」とSTEM分野を学ぶ女性たちへのエールも。
「やりたいことが見つからなくても焦る必要はないと思います。でも『もしかしたらこっちかも』って思った時に諦めるのではなくて、気づいた時点から方向修正をしていけたら良いのかなと思っています」
憧れから始まったSTEMの道
一般社団法人三省会グレイス杉山クリニック渋谷院長の岡田有香先生は、現在まで産科婦人科全ての領域に携わってきました。ご自身も不妊治療を行う中で不妊予防の重要性を認識し、Instagramでも生理痛や不妊妊活の知識を幅広く発信されています。
理系分野に関心を持ち始めたのは、小学生の頃だそう。
「後に進学する中学校の文化祭に行った際に、物理部の実験を見せてもらったんです。その時に、『こんなことが、中学生のお姉さんにできるんだ!』と憧れを抱いた記憶があります」
『イヴの七人の娘たち』、そして遺伝子との出会い
「中学校3年生で、大学生の卒論のようなものを書く機会がありました。遺伝子に興味があることを母に話したら、『イヴの七人の娘たち』※1という本を持ってきてくれて。ミトコンドリアDNAを辿っていくと全世界の人が7人の女性にたどり着くというその話が面白くて、論文の題材に決めました」
進学した高校では、生徒の3分の1が医学部へと進む中、「みんな医学部に行くなら、私は行かなくてもいいじゃないか」という反発心から、別の道で遺伝子に携われる仕事を考えることに。
「当時はまだゲノム創薬や分子標的薬がたくさん出てくる状態ではなかったので、そこをやりたいと思いました」
理工学部から医学部への方向転換
そして、早稲田大学の先進理工学部へ進学するも……。
「入学後すぐの講義で、創薬の研究費についてのアメリカと日本の莫大な差を知って、しばらくアメリカに行かなければ、最先端の研究はできないなと気付きました」
人に携わることが好きだという岡田先生は、「1日研究漬けみたいな日々もあまり楽しいと思えない気持ちもあって、早々と方針転換をしてしまいました」と話し、遺伝子と人に携わることができる医学の分野へと舵を切ることに決めます。
岡田先生の産婦人科医としてのキャリアは、幼い頃に抱いた遺伝子への憧れ、好奇心の確かな延長線上にあるようです。
全編はYouTubeで配信中!
STEM分野を学ぶ方へのパワフルなメッセージ、そして「いつからでも、どこからでもチャレンジできる」を実践してきたお二人のキャリアを深堀りしたオンラインセミナー。「〜先輩に学ぶ未来の描き方〜私が守る私の“カラダ”」の全貌は、Wsociety公式YouTubeチャンネル(【W society】W week ≪DAY1≫ ~先輩に学ぶ未来の描き方~私が守る私の“からだ”)をチェックしてみてください!
ダイジェスト版・後編では、岡田有香先生のお話しを中心に、自分自身のカラダを知ることの大切さについて考えます。キーワードは「プレコンセプションケア」。10代〜20代の若い世代にこそ伝えたいこととは?
※1 ブライアン・サイクス 著 大野晶子 訳(2020).『イヴの七人の娘たち 遺伝子が語る人類の絆』. 河出文庫.
ライター:miyuki