
女性の心身的課題(W=woman)と社会的課題(society)の両面から女性活躍をデザインするプロジェクト「W society(ダブリュー ソサイエティ)」 は、一般社団法人 日本経済団体連合会 ダイバーシティ推進委員会が実施した「女性の健康」に関する調査に協力いたしました。新年度の始まりにあたり、企業における女性の健康支援の現状と課題を明らかにすることを目的とし、ダイバーシティ推進委員会所属企業および関連企業を対象に調査を実施。企業における、女性の健康支援制度の導入率や活用実態、経営層と現場の認識のギャップ、さらに女性の健康支援が企業の成長や組織風土に与える影響について調査しています。なお、本調査の設計にはW societyの参画企業であるオルガノン株式会社のご協力を得ました。
調査サマリー
- 企業がサポート可能だと考える女性の健康問題の第1位は「月経にまつわる不調」(83.3%)。次いで「子宮筋腫、子宮がん、乳がんなど女性特有のがん」(59.4%)、「更年期に関連して生じる不調」(53.1%)。
- 95.8%の企業が女性の健康支援を実施。しかし、女性へのサポート状況を「進歩的である」と評価したのはわずか25.0%に留まる。
- 健康支援制度の実施率(95.8%)は高いが、多くの企業が「利用率10%未満」または「利用実態を確認したことがない・分からない」と回答。
- 経営層の32.3%が「健康支援は総じて浸透している」と回答する一方で、一般従業員層では「一部に浸透しているが、大半は浸透していない」(41.7%)が最多となり、経営層と現場でギャップが存在していることが判明。
- 社内アンケート結果の共有範囲について尋ねたところ、36.5%の企業が「従業員へのアンケート/ヒアリングを実施していない、または状況を把握できていない」と回答。
- 女性の健康支援制度が進まない最大の理由は「制度設計が困難なため」(20.8%)。次いで「社員からの要望がないため」(14.6%)、「リソース不足のため」(12.5%)。
- 女性の健康支援制度がもたらす影響として、企業が認識している主な効果として「社員の生産性向上につながる」(52.1%)が最多。次いで「女性社員定着率の向上につながる」(22.9%)、「会社の社会的評価向上につながる」(6.3%)「多様性に寛容な社風への刷新」(6.3%)。
- 76.0%の企業が、女性の健康課題に関する取り組みを「DEI/女性活躍の取組みとして位置付けており、経営全体としてのゴールは設定していない」と回答。一方で、「経営戦略の上位に位置付けており、具体的な経営目標を設定している」と回答したのはわずか11.5%と、経営戦略として具体的な目標は設定していない企業が多いことが判明。
調査の目的
多くの企業が新年度を迎えるこの時期。職場のあり方や人事施策を見直すタイミングにあわせて、W society(ダブリュー ソサイエティ)は、一般社団法人 日本経済団体連合会 ダイバーシティ推進委員会が実施した「女性と健康」に関する調査に協力しました。
近年、「DEI(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)」や「健康経営」「人的資本経営」の重要性が高まり、企業はこれまで以上に従業員の健康と働きやすさに向き合うことが求められています。特に、労働人口の約4割を占める女性が、月経や更年期に伴う不調、出産・不妊治療といったライフイベントと向き合いながらキャリアを継続するためには、個人の努力に委ねるのではなく、企業による環境整備が不可欠です。
しかし、経済産業省が2024年に発表した試算によれば、女性特有の健康課題による労働損失・経済損失は年間約3.4兆円にのぼります。企業の生産性や人材定着にも深刻な影響を及ぼしているにもかかわらず、多くの企業では女性の健康支援策が十分に活用されておらず、経営層と現場の間で認識のギャップが生じているのが現状です。
こうした現状を踏まえ、W society(ダブリュー ソサイエティ)は、一般社団法人 日本経済団体連合会 ダイバーシティ推進委員会が実施する「女性と健康」に関する調査に協力いたしました。なお、本調査の設計にあたり、昨年「女性の健康とキャリアに関する調査白書」を共著した、女性の健康に注力するヘルスケア企業 オルガノン株式会社にもご協力をいただきました。
本調査では、企業における女性の健康支援の導入状況、実際の活用度、経営層と現場の意識のギャップ、健康支援が企業の競争力や組織風土に与える影響を分析し、今後の方向性を探ります。
企業が女性の活躍を支援するには、単に機会を提供するだけでは不十分です。健康という基盤を整えることが、キャリアの継続、企業の人材確保、エンゲージメント向上、さらには生産性の最大化に繋がるからです。しかし、多くの企業では、制度が整っていても十分に活用されておらず、実効性のある支援にはまだ課題が残っています。女性の健康支援は、単なる福利厚生ではなく、企業の競争力を高め、社会の持続的成長を支える経営戦略の一環です。本調査の結果が、企業の健康支援のあり方を見直し、より実効性のある施策へと進化させる契機となることを期待しています。
「女性の健康」に関する調査 調査概要
■調査実施主体:一般社団法人 日本経済団体連合会 ダイバーシティ推進委員会
■調査手法:インターネット調査
■調査対象:経団連ダイバーシティ推進委員会、同企画部会所属企業
■実施時期:2024年12月13日〜2024年12月26日
■回答件数: 96件
■調査結果URL:https://www.keidanren.or.jp/policy/2025/023.pdf